Kyrie 3節、Christe 3節、Kyrie 3節の計9節からなるが、最初の Kyrie の3節目は1節と同じ、Christe の3節目も1節と同じで、中音では通常省略して演奏する。また Christe の2節目に別版 (?) があるが、これも中音では省略する。
便宜上1から9までの通し番号を用いる。
1. Kyrie
前掲の楽譜の通りである。カントゥス・フィルムスは聖歌の "Ave Regina caelorum" の部分を引き伸ばしたものでテノールが受け持つが、冒頭バスが5度下で先導している。そのバスの上5度と3度の間をうねりながら下降するソプラノのメロディの美しさはたとえようもない。
曲の最後はランディーニ終止形であるが、全パート一斉ではなくアルトが経過音を交えて少し動いて終止音に至る (ミファソ)。このパターンはこのミサ曲の各所に現れ、特徴的である。
2. Kyrie
1. Kyrie のカントゥス・フィルムスの音型を少し変えたメロディがテノールに置かれ、ソプラノ、アルトを伴って最初から歌われる。
4. Christe
聖歌の "Regina" (または "Salve") の部分をモティーフとして、バス、アルト、テノールの順で模倣的に入り、ソプラノが対旋律で最初から参加する。終止はランディーニ型ではないが、ここでもアルトが少し動いて終止音に至る。
5. Christe
上2声のカノンにバスが対旋律で参加する。モティーフは "Salve radix" と思われる。終結部に至ってリズムが変わる (現在の用語でいえば 4/4 から 6/8)。Gloria 以降このようなリズム変化は随所に現れる。
7. Kyrie
冒頭動機に似たソプラノの音型に先導されて、"Gaude gloriosa" に基づくカントゥス・フィルムスをテノールが歌う。ここでの終止はアルトが和音の中で動く (ミドソ)。
8. Kyrie
3声曲。自由な構成であるが終結部に上2声の模倣が見られる。
9. Kyrie
"Vale valde" に基づくカントゥス・フィルムスがソプラノ、バスを伴って最初から現れる。ここでの終止はまたしてもアルトの小さい動きで特徴付けられる。