Ave regina caelorum, | めでたし天の女王 | |
Ave domina angelorum, | めでたし天使の主 | |
Miserere tui labentis Dufay, | 去りゆくデュファイをあわれみたまえ | |
Ne peccatorum, ruat in ignem fervorum | 罪を除き、業火に焼くことなかれ | |
Salve radix sancta, | めでたし聖なる根 | |
Ex qua mundo lux est orta, | その根から世のために光が生まれた | |
Miserere, miserere, genitrix Domini, | あわれみたまえ、あわれみたまえ、主の御母 | |
Ut pateat porta caeli debili. | 天の門を開けたまえ。 |
Ave regina caelorum | めでたし天の女王よ | |
Ave domina angelorum | めでたし天使の主よ | |
Miserere tui | 汝が死にゆくデュファイを | |
labentis Dufay, | 憐れみたまえ、 | |
Ne peccatorum ruat | もえさかる炎に | |
in ignem fervorum. | おとしめたまわぬように。 | |
Salve radix sancta, | めでたし聖なる根よ、 | |
Ex qua mundo | 御身によりて | |
lux est orta. | 世に光出でたり。 | |
Miserere, miserere, | 憐れみたまえ、憐れみたまえ、 | |
genitrix Domini, | 主の御母よ、 | |
Ut pateat porta | 天の門は弱きものに開かれて | |
caeli debili. | あるように。 |
グレゴリオ聖歌 Ave Regina caelorum に基づく4声モテトゥス。デュファイ最晩年の作と想像される。臨終の折にこの歌を歌うよう遺言したと伝えられるように、聖歌のテキスト中に「去りゆくデュファイをあわれみたまえ・・・」といった私的な祈願が挿入されている。
曲は上2声の "Ave Regina caelorum" のパラフレーズで始まり、アルトとバスの "Ave domina angelorum" のパラフレーズに受け継がれ、テノールのカントゥス・フィルムス "Ave Regina caelorum" にかぶせて、他3声がトロープス "Miserere tui ..." を歌う。この部分のソプラノのメロディは、同名のミサの第2アニュス・デイの "Miserere" を一瞬想起させる。
第2部に当たる "Salve radix" は上2声を下2声が追う模倣で始まり、トロープス "Miserere, miserere genitrix ..." に入り、カントゥス・フィルムス "Ex qua mundo ..." を迎えて、下降音型と上昇音型 (どちらも聖歌のモチーフ) の響き合いから上昇音型が抜け出して終る。